ヘルベルト・フォン・カラヤン(指揮)/ベルリン・フィル、クリスタ・ルートヴィヒ(MS)
録音:1975年1,2月、1977年2,3月、ベルリン、フィルハーモニー
DG【ドイツ輸入盤】
カラヤンは、マーラーの作品を積極的に取り上げなかったものの、1970年代から1980年代はじめにかけて第4~6番、第9番、「大地の歌」を次々にレコーディングしました。カラヤンのマーラーは、いわゆるマーラー指揮者として高く評価されている他のアーティストたちの演奏とはかなり異なっており、ベルリン・フィルの機能美をいかした洗練された明るい音色でレガートに歌いあげたロマンチックな演奏です。特にこの第6番は、カラヤンの個性がある意味最大限に発揮されたゴージャスかつ美麗な演奏だけに、悲劇的な曲調と相容れない部分もあることは否めません。しかし、音の色彩やバランス、レガート奏法に対するカラヤンの徹底ぶりはたいへん見事であり、大音量でオーケストラのゴージャスな音の洪水に身を浸すことができれば、極めて心地よい演奏です。特に第3楽章「アンダンテ」は、カラヤンの美意識が隅々まで行き渡り、流れように歌う弦楽合奏は極上の美しさ。
さらにクリスタ・ルートヴィヒと組んだ歌曲も聞きもので、とりわけ「亡き子をしのぶ歌」は最高レベルの名演。カラヤンの精緻で甘美な演奏は、この曲の耽美的な美しさを絶妙に引き出しています。ルートヴィヒも落ち着きのある声で、深々とした表現で格調高く歌っており、曲に込められた愛情と暖かみがたっぷりと感じられます。凄い!