ライモンド・カンピージ(ピアノ)、ドミトリー・ヤブロンスキー(指揮)/ロシア・フィル 録音:2005年
Bel Air Music【モナコ輸入盤】
なかなか気持ちのよいガーシュウィンのアルバム。ジャズの奏法や響きはロシアのオケとは思えないほどよく表現されており、明るく健康的で、ライトなアメリカ音楽という雰囲気がちゃんと出ています。「ラプソディ・イン・ブルー」では、ピアノのカンピージは居酒屋風の猥雑さがあって、表現意欲が旺盛です。冒頭のクラリネットのソロもなかなかかっこよく決まっていて、ロシアの演奏とはちょっと信じられないほどリズムのノリも自然です。「アイ・ゴット・リズム」変奏曲は意外に録音が少ない曲ですが、このメロディーは一度聴いたら、耳から離れないほど魅力的。なんでもっと演奏されないのか全く理解できません。
そして、最後の「ピアノ協奏曲」が一番の聞きもの。今まで、この曲についてはプレヴィンをはじめずいぶんいろいろ聴いてきましたが、品が良すぎてガーシュウィンらしい味わいがなかったり、演奏技術に問題がある演奏ばかりで、これというものに出会えませんでした。しかし、これで一気にこの曲の魅力が分かってきました。「ラプゾティー・イン・ブルー」より好きだという評論家の意見にずっと納得できなかったのですが、私もそう考えるようになってきました。このカンピージ盤はフレッシュさと生きの良さがある演奏です。1楽章などは激しく盛り上がりすぎて、これで曲が終わってしまうような感覚で締めくくられており、2楽章はカンピージの爽やかな歌心が溢れています。3楽章はラプソディー・イン・ブルーも顔負けのノリノリぶりで異様に楽しい演奏です。また、ヤブロンスキーはこういうノリの良い曲が本当に巧い。オケはちょっとB級っぽさがあるのもかえって相応しいように思えてくるから不思議。録音は、ベル・エアーの中では特に素晴らしいものです。