フー・ツォン(ピアノ)、ムハイ・タン指揮/シンフォニア・ヴァルソヴィア 録音:1989年
MERIDIAN【イギリス輸入盤】
ショパン弾きとして名声を博したフー・ツォンですが、フー・ツォンの協奏曲録音は権利上の問題や録音には極めて慎重な演奏者自身のこだわりがあり、なかなか市販化されることがありませんでした。しかし、イギリスのメリディアン・レーベルからようやく発売されたアルバムはどれも珠玉の演奏ばかり。中でもこのショパンの協奏曲集は、かつて「ノクターン」などで絶賛を集めたフー・ツォンならでは凄い演奏です。ゆったりしたテンポの中で、粒のそろった美しいタッチで極めて丁寧に歌っています。その表現のヴァリエーションの豊富さも驚くほどで、どのフレーズをとっても安易に流れてしまう部分はなく、まさにすべてが音楽的に考え抜かれた表現と言っていいでしょう。フー・ツォンが病的なまでのこだわりぶりを発揮し、世のピアニストたちとは明らかに一線を画した尋常ならざる名演です。シンフォニア・ヴァルソヴィアの伴奏も表現の彫りが深く、フー・ツォンとの統一感も素晴らしいものです。ショパン好きには強力にオススメです。