１～３．ベートーヴェン／ピアノ・ソナタ第23番 ヘ短調 Op.57「熱情」
４～６．ブラームス／３つの間奏曲 Op.117
７～８．ブラームス／パガニーニの主題による変奏曲 Op.35
ユーリ・ディデンコ（ピアノ） 録音：2002年
Classical Records【ロシア輸入盤】
ユーリ・ディデンコ(1966-)はウクライナ生まれのピアニスト。モスクワ音楽院でメルジャーノフやムンドヤンツに師事し、現在は母校で教鞭を執っています。ソリストとしてはリストをはじめロマン派の作品を得意とし、VISTA VERAレーベルにはメシアンやリストなど複数の録音を行っています。また、モスクワ・ラフマニノフ協会の事務局長も務めたり、このClassical Recordsレーベルを自身で立ち上げて、モスクワ音楽院の名教授たちの貴重な録音や新進若手アーティストを紹介する優れたアルバムを次々にリリースするなど八面六臂の活躍ぶりを示しています。
このアルバムは、ディデンコ自身の演奏を自己のレーベルからリリースしたものなので、我田引水の印象は免れませんが、実際聴いてみると、さすがモスクワ音楽院の俊才と謳われるだけあって、３曲ともかなり優れた演奏です。リストやラフマニノフが得意というだけあって、テクニックの冴えは抜群で、難曲で知られるブラームスの「パガニーニ変奏曲」を軽やかといってもいいほど鮮やかに弾きこなしています。余裕さえ感じられるほど全く暑苦しさのないクールな演奏で、タッチや響きのクリヤーさは見事。ベートーヴェンの「熱情」も音の粒がとても美しく、掛け合いや内声の動きが透けて見えるような卓越したバランス感覚を披露しています。ブラームスの「３つの間奏曲」ではクールな眼差しの中にもロマンチックな歌心があって、しみじみと聴かせてくれます。
