プロコフィエフ：
1-10. 「ロメオとジュリエット」からの１０の小品
11-15. サルカズム
16-35. 束の間の幻影（全曲）
アンナ・マリコワ（ピアノ） 録音：2005年
Classical Records【ロシア輸入盤】
矢継ぎ早にリリースが相次いでいるアンナ・マリコワですが、どのディスクも完成度が高い演奏で、購入していただいたお客様にも大好評です。彼女が得意とするショパンの一連のアルバムも素晴らしいものばかりでしたが、このプロコフィエフも群を抜く美しい演奏で度肝を抜かれます。玄人好みのわりに珍しい選曲ですが、曲の真価をまざまざと見せつけてくれ、プロコフィエフ・ファン以外にも広く聴いていただきたいところ。
「ロメオとジュリエット」はバレエ曲として有名ですが、この１０の小品は原曲がどうのこうの言う以前にピアノ作品としても極上であることを示しています。決して鍵盤をガンガン叩いているわけではないのに、スケール感の大きい表現と適度なダイナミクスが効いていて、オーケストラにも負けない表現力。あくまでピアニスティックな演奏なのに、この迫力はちょっと想像を超えています。もともと甘美なメロディーが多い曲だけに、プロコフィエフの珠玉のメロディーが次々に現れ、ファンタジーの世界へ優しく導いてくれる感じ。女性にもきっと幅広く支持されることでしょう。
わりに珍しい「サルカズム」も近年演奏される機会が増えてきた曲で、「風刺」と訳されるとおりプロコフィエフらしいユーモアの効いた楽しい内容です。マリコワの演奏は毒が無さ過ぎるかも知れませんが、いままで聴いたどの演奏よりも魅力的であることは確か。また、プロコフィエフのピアノ作品の名曲なのに、あまり認知されているとは言い難い「束の間の幻影」にはビックリ。正直いって私もこの曲がこれほど美しい旋律とユーモアたっぷりの機知に富んだ曲であることはこの演奏で初めて知りました。ハッキリ言ってすごく面白いです。プロコフィエフのピアノ曲の真価をじっくり楽しめる優れたアルバムの登場です。
