ベートーヴェン（1770-1827）：
ＣＤ１：
1-4. ピアノ・ソナタ第１番 ヘ短調 Op.2 No.1
5-7. ピアノ・ソナタ第12番 嬰ハ短調「月光」Op.27 No.2
8-10. ピアノ・ソナタ第17番 ニ短調 「テンペスト」Op.31 No.2
11-13. ピアノ・ソナタ第23番 ヘ短調「熱情」Op.57
ＣＤ２：
1-3. ピアノ協奏曲第５番 変ホ長調「皇帝」Op.73
ミハイル・ヴォスクレセンスキー（ピアノ）
コンスタンチン・マスリューク（指揮）／パヴェル・スロボトキン・センター・モスクワ室内管弦楽団
録音：2009年（ＣＤ１）、2010年（ＣＤ２，ライヴ）
Classical Records【ロシア輸入盤】
ヴォスクレセンスキー(1935-)はウクライナ出身のピアニストで、若い時期はレフ・オボーリン門下生としてエネスコ・コンクールやヴァン・クライバーン・コンクールなどに入賞したこともあります。しかし、ソ連時代は当局からの出国許可が出なかったため、幻のピアニストになってしまっていました。その後、モスクワ音楽院教授となって後進の指導にあたり、教師としても非常に優れた資質を示しています。また、スクリャービンの権威として知られ、現在は国際スクリャービン協会のリーダーを務めているほどです。我が国では桐朋学園大学や東京芸術大学等での教育活動によっても知られています。
このアルバムは、そんなヴォスクレセンスキーのベートーヴェンのピアノ・ソナタ４曲のスタジオ録音とピアノ協奏曲第５番のライヴ録音を収めています。ヴォスクレセンスキーはスクリャービンをはじめ、ショパンやシューマン、シューベルト、ラフマニノフといったロマン派の作曲たちを中心にClassical Recordsレーベルにたくさんの録音をしてきましたが、近年はモーツァルトのピアノ協奏曲に力を注ぎ、2010年末にようやく完成したところ。ベートーヴェンについては、以前に「ハンマークラヴィーア・ソナタ」を録音しており、今後はベートーヴェンに腰を据えるのかも知れません。今回録音した４曲のソナタ集の中では、「月光」や「熱情」が予想外のパワフルな熱演です。おそらく一発録りに近い録音と思われ、技術的な綻びも無いわけではありませんが、とても70歳を遙かに超えたピアニストの演奏とは思えない覇気とスケール感はまことに立派。特に「月光」や「熱情」の第３楽章の迫力には圧倒されます。「テンペスト」も決して枯れた味わいではなく、むしろしっかり歌い込んだ情感たっぷりの濃い演奏で、じっくり傾聴に価する名演です。「ピアノ協奏曲第５番」も王道をいく堂々としたスタイルで、ベテランらしい風格を感じさせます。
