1-3. ウォルトン(1902-1983)/ヴァイオリン協奏曲
ウィリアム・ウォルトン(指揮)/フィルハーモニア管弦楽団 録音:1950年6月
4. サン=サーンス(1835-1921)/ハバネラ(アヴァネーズ) Op.83
ウィリアム・スタインバーグ(指揮)/RCAビクター交響楽団 録音:1951年6月
5-7. シンディング(1856-1941)/古風な様式の組曲 Op.10
アルフレッド・ウォーレンスタイン(指揮)/ロサンゼルス・フィル 録音:1953年12月
8-10. カステルヌオーヴォ=テデスコ(1895-1968)/ヴァイオリン協奏曲第2番「預言者」
アルフレッド・ウォーレンスタイン(指揮)/ロサンゼルス・フィル 録音:1954年10月
ヤッシャ・ハイフェッツ(ヴァイオリン)
NAXOS【香港輸入盤】
ハイフェッツが、同時代の作曲家の作品を積極的に取り上げたことは良く知られていますが、このウォルトンの協奏曲もそんな1曲です。ウォルトンの協奏曲は、ハイフェッツ自身が作曲料を支払い、初演を行ったという経緯があります。作曲者自身から「自由に編曲してよい」との了解を取り付けて、ハイフェッツは以降たびたび手を加えたとされますが、その後も幾度も演奏を行いウォルトンの名声をも高めた作品です。初演後にウォルトン自身がオーケストレーションに手直しを加え、この演奏も改定稿に拠っています。映画音楽を思わせる壮大でロマンティックな音楽をハイフェッツが気合いを込めて演奏しており、とても魅力的です。
マリオ・カステルヌオーヴォ=テデスコ(1895-1968)はイタリアの作曲家で、ギターの巨匠セゴビアとの出会いから生まれたギター作品(「プラテーロと私」や「ギター協奏曲」)でよく知られています。カステルヌオーヴォ=テデスコは、ファシズムの台頭ほ避けて米国に移住した後は、映画音楽のジャンルでも活躍し、彼の本領は管弦楽曲にあるともいわれています。ヴァイオンの巨匠、ハイツェッツの委嘱によるヴァイオリン協奏曲第2番「預言者たち」は知る人ぞ知る傑作。旧約聖書やユダヤの典礼の儀式に基づいて書かれたこの協奏曲は、オリエンタルなメロディー満載の神秘的かつエキゾチックなムードが素晴らしく、こんな面白いヴァイオリン協奏曲があったのかと虜になる人も多いはず。カステルヌオーヴォ=テデスコの巧みな管弦楽法は実に見事で、ジェリー・ゴールドスミスやジョン・ウィリアムズなど後に大活躍するハリウッドの作曲家たちが彼の影響を受けたというのも頷けます。
また、クリスティアン・シンディング(1856-1941)は、グリーグの次の世代を担ったノルウェーを代表する作曲家。シンディングの代表作といえば「春のささやき」が圧倒的に有名ですが、「古風な様式の組曲」も埋もれているには惜しい素敵な作品です。タイトルに「古風な様式」とあるわりにはヴァイオリン・ソロはなかなか快活で、ハイフェッツに相応しいヴィルトォーゾ性に溢れています。マーク・オーバート=ソーンによる復刻なので、ノイズが少なく非常に聴きやすい音質となっています。特にカステルヌオーヴォ=テデスコの「預言者」は、決定盤として強くオススメします。