ロリン・マゼール(指揮)/ピッツバーグ交響楽団
録音:1994年4月26,27日、ピッツバーグ・ハインツホール
SONY【ヨーロッパ輸入盤】
マゼールがピッツバーグ響の音楽監督時代の録音で、オルガン部分のみアンソニー・ニューマンを起用し、ニューヨークで別途録音したというこだわりのアルバム。マゼールはもともと意表をつく個性的な演奏をすることで知られていますが、この手の音楽を振らせたら天下一品の演奏を聴かせる彼らしく、鮮やかで華麗な演奏を聴かせてくれます。ただ、クリーヴランド交響楽団と録音した旧盤のような豪快な表現はむしろ後退しており、響きはむしろスリムになり、細部までこだわり抜いたかなり知的な演奏です。響きの明晰さが尋常でなく、バランスへの配慮も耳の良いマゼールならでは。オルガンもかなり効果的です。ギラギラした色彩や度肝を抜くようなパワーを敢えて避けているのではと思えるほどですが、そのぶんピアニシモでの淡い色彩やゆったりした部分の情緒はちょっと他では聞けない美しさ。こってりしたパワフルな演奏を求める方には不向きかも知れませんが、じっくり聴くとその完成度の高さやマゼールの意図が次第に理解できる魅力的なアルバムです。