1-4. セルゲイ・ラフマニノフ(1873-1943)／チェロ・ソナタ ト短調 Op.19
5. ラフマニノフ／14の歌 Op.34より第14番「ヴォカリーズ」（チェロとピアノ編,1915年版）
6. ヴィクトル・ススリン／気が触れた唄
7. ススリン／ロ音
ヒョン=ジョン・ベルガー（チェロ）、ジョゼ・ガラルド（ピアノ） 録音：2011年1月5-7日
SOLO MUSICA【ドイツ輸入盤】
ソウル生まれの女性チェリスト、ヒョン=ジョン・ベルガーによる「歌に満ちた」1枚です。彼女はトーマス・デメンガとユリウス・ベルガー（現在の夫)に師事し、ハインリヒ・シフとデニス・ジグモンディのマスタークラスに出席しています。数多くの賞を受賞し、またザルツブルク・モーツァルテウム国際サマー・アカデミー賞にも輝いています。ソリストとしても輝かしい実績を誇り、もちろん室内楽の分野でも目覚ましい活躍をしていて、文字通り「アジアとヨーロッパの架け橋」としての役割を担っています。
このアルバムは、ラフマニノフと、ウラル生まれの現代作曲家ススリンの作品を並べることで、奥深い音色の世界へと分け入ることに成功しています。ラフマニノフの「チェロ・ソナタ」は30分を超える大作で、ロシア情緒満点のメロディが散りばめられたアンニュイでメランコリックな音楽です。欧米の男性チェロ奏者が演奏すると、どうしても身振りの大げさな劇的な表現になってしまいがちですが、ヒョン=ジョン・ベルガーはアジア人女性らしい冷静沈着さと抑制の効いた表現により、内面から湧き出る悲しみをじっくりと歌い上げることでよりリアルに伝えています。「ヴォカリーズ」も速めのテンポで一見素っ気なく歌っていますが、涙をうかべつつも必死で泣くのをこらえているような切なさが見事に表現されています。
さらに凄いのはヴィクトル・ススリンの洞察力に満ちた神秘的な音楽です。２曲ともスコルダチューラ奏法や変則的調弦といった特殊奏法を用ており、暴力的でインパクトの強い響きが横溢しています。12分ほどの小品ながら、そのパワーと斬新さは圧倒的で、ヒョン=ジョン・ベルガー緊張感にみちた熱演に思わず最後まで聞き入ってしまいます。ススリン初体験の方は、こんな面白いチェロ作品があったのかと驚かれるでしょう。薄型デジパック・ケースです。
