1. パガニーニ(1782-1840)／パイジェッロの「水車屋の娘」の「うつろな心」による序奏と変奏曲 Op.38/MS.44
2. カミロ・シヴォリ(1815-1894)／12のエチュード・カプリース Op.25より第５番
3. ヨハン・ヴェンツェル・カリヴォダ(1801-1866)／６つのエチュード・カプリース Op.87より第３番
4. レオン・デ・サン=リュバン(1805-1850)／ドニゼッティの「ランメルモールのルチア」の主題による幻想曲 Op.46
5. オットー・ゾルダン／ヴァイオリン独奏のための四重奏曲 ト長調 Op.2
6. クライスラー(1875-1962)／レチタティーヴォとスケルツォ・カプリース Op.6
7. グリーグ(1843-1907)／ヨッヘン・ブルッシュ編／蝶々 イ長調
8. ビゼー(1838-1875)／トゥルバン編／カルメン奇想曲
9. スペイン民謡／ルッジェーロ・リッチ編／ スペインのバラード ニ短調（禁じられた遊び）
10. ロドリーゴ(1901-1999)／カプリッチョ－プレスト ト短調
11. ジョゼフ・アクロン(1886-1943)／民謡「おお、かわいいオーガスティン」による音楽の冗談
12. メンデルスゾーン(1809-1847)／トゥルバン編／結婚行進曲
13. ボリス・メルソン(1921-)／モーツァルトの「兄弟たちよ、手に手を取って」による古典的様式の技巧的変奏曲 ト長調
インゴルフ・トゥルバン（ヴァイオリン） 録音：2003年11月8-9日
TELOS【ドイツ輸入盤】
ドイツの名ヴァイオリニスト、インゴルフ・トゥルバンによる無伴奏ヴァイオリンのための超絶技巧作品集。トゥルバンは1964年にミュンヘンに生まれ、1985年から1988年まで気難しいことで有名な巨匠チェリビダッケのもとでミュンヘン・フィルのコンサート・マスターを務めただけに、卓越した技巧と豊かな音楽性を誇っています。その後、ソリストとして世界中で活動しており、60余りのオーケストラと共演し、1995年にはシュトットガルト国立音楽院教授に就任しました。トゥルバンはもともとパガニーニを得意としていますが、これまであまり日の当たらなかったカミッロ・シヴォリ(1815-1894)の作品を積極的に取り上げており、このアルバムでも師のパガニーニと弟子のシヴォリの作品を対比するようにプログラムを作っています。
ピアノと違って弦楽器は多声部を弾くことは本来困難なものですが、バッハの「無伴奏ヴァイオリン・ソナタとパルティータ集」をはじめとして、それに挑戦するような技巧的な無伴奏ヴァイオリン作品がバロック時代から現代まで多くの作曲家によって作られてきました。トゥルバンはこのアルバムで、自身による見事な編曲作品を含め、そのような技巧的な作品を積極的に紹介し、また鮮やかに演奏してみせます。コントロールが難しい高音も安定したピッチで軽やかに弾きこなし、超絶技巧の部分も難なくサラリと弾いてしまうので、聴き手は難しさをほとんど感じ取ることができないほど。名人芸を見せつけるかのようなアクの強い表現や濃いヴィブラートもほととんど用いておらず、飄々とした軽妙な演奏スタイルこそ、まさに真の名手の証といえるでしょう。まるでおもちゃのようにヴァイオリンを嬉々として演奏するトゥルバンは、古のパガニーニやシヴォリと全く同じタイプの演奏家なのかも知れません。
